ごはんのポテンシャル、完璧に引き出せていますか? 私たちが「ソラミドごはん」で目指していく未来。
スカイベイビーズが運営するお米のオンラインストア「ソラミドごはん」のコンセプトは「今日も、ごはんがおいしいな。」です。日々の食事をそう思える人は、きっと自然体で過ごせているはず。そんな人を増やすため、ごはんの魅力を伝えるさまざまなコンテンツを制作するディレクター・伊東麻美さんも、お米をこよなく愛する一人です。ご自身の暮らしや価値観にもふれながら、「ソラミドごはん」が目指す未来について語ってもらいました。
※ソラミドごはんはこちら
お米って、ちゃんと炊いたらこんなにおいしいんだ!?
――伊東さんは、どんな経緯で「ソラミドごはん」に出会ったのでしょうか。
「ソラミドごはん」が立ち上がるとき、スカイベイビーズ(以下スカイ)代表の安井から「ごはんを扱うメディアなんだけど、やってみない?」と声をかけてもらったんです。お米は大好きだからぜひやりたい! と、専属ディレクターを引き受けました。スカイにはフリーランスのWebディレクターとしてジョインしたため、それまでは制作案件も担当していたんですが、そういう仕事は個人でもできること。せっかく「ソラミドごはん」が始まるのなら、自社メディアを育てていくというフリーランスではできない経験に力を入れたいと思ったのもあります。
――いまの「ソラミドごはん」は、どんなWebサイトですか?
誰もが自然体で生きられるように、ごはんの魅力を伝えていくサイトです。オンラインショップという立て付けですが、お客さまにはかならずしも購入してもらわなくていいと思っています。お米って当たり前に買うものだから、まずはそれぞれの違いや奥深さに興味を持っていただかないと、買い替えまで至らないんですよね。だから「ごはんっておいしいよね」「もっとお米を知ってみたい!」と思っていただけるのも、充分に素敵なゴールです。
サイト制作チームにお米のプロはいませんが、プロがやっていない専門メディアって、逆に新しい。専門家の監修もきちんと入れながら、素人ならではの視点を織り交ぜて、面白いコンテンツをつくっていきたいと考えています。
――伊東さんご自身も、お米にはものすごくこだわりがあると伺っています。
お米のおいしさに気づいたのは、この2年くらいです。それまでは30分間の浸水なんてしたことがなかったし、炊飯器はいつも早炊きモード。ごはんはおかずの引き立て役で、それほどのおいしさを求めてもいませんでした。
――それが、どうしてお米ラバーになったのでしょうか?
浅草に住んでいたとき、かっぱ橋道具街を歩いていて、羽釜が並んでいるのを見かけたんです。胴にぐるりとつばが付いていて、「日本昔ばなし」に出てくるようなお釜。そのビジュアルに惚れ込んだのですが、火加減も難しいし、そのとき住んでいたマンションのキッチンでは使いこなす自信がなくて……。いったんあきらめたものの、その2年後、茨城への移住話が持ち上がったんです。義祖父が住んでいた古民家をリフォームして住むことになり、キッチンのショールームを訪れたら、ごはんマークがついているコンロを見つけて! スイッチを押したら、自動で火加減を切り替えて、お米を炊き上げてくれるコンロでした。それで「移住先にこのコンロを入れたら羽釜が使える!」と、ひとめぼれした羽釜をついに手に入れたんです。
――2年越しに味わう念願の羽釜ごはん、いかがでしたか?
もう最高でしたね。炊飯器で炊いたごはんとは、香りも歯ごたえも全然違うんです。一口ごとに、ごはんの甘さがふわりと鼻を抜けていく。「お米って、ちゃんと炊いたらこんなにおいしいんだ!?」と感激しました。
使ったあとの羽釜は水に漬けっぱなしができないため、どんなに疲れていてもその日のうちに洗ってから寝ないといけなかったりして、手間はかかるんですが……とにかくおいしいから、しょうがない。買って以降、一度も洗いそびれたことはありません。
それ以来、夫婦でも「家で食べるごはんが一番おいしいよね」「今日はどんなふうにごはんを食べようか?」と、わくわくしながら話すようになりました。「ソラミドごはん」のコンセプト「今日も、ごはんがおいしいな。」は、まさに我が家の会話です。
改めて考える必要もないほど「自然体」で生きている
――移住して暮らしが変わり、羽釜と出会って食卓が変わったわけですね。
最初は週末だけ茨城で暮らす二拠点生活のつもりだったんですが、住み心地がよくなりすぎて、東京のマンションは引き払ってしまいました。自然のなかで暮らすことにも、前から憧れていたんですよね。いまは、朝起きたらまず玄関を開けて、庭に犬を放します。遊ぶ犬を眺めながら、庭の椅子に座って20分くらいぼーっとしていると、すべての疲れが抜けていくような感覚がある。本当にいい暮らしができていますね。
――肩の力を抜いて、おいしいものや優しい時間に向き合って……伊東さんの暮らしから、まさに「自然体」を感じます。
スカイではこれまで、たびたび「自然体とはどんな状態だろう?」といった議論が重ねられてきました。でも、じつは私はその議論にあまりピンときていなくて……だって、そもそも自然体で生きているから、あえて言語化したり求めたりする必要がなかったんですよね。
――その「自然体」は、いまのような暮らしを手に入れる前から、伊東さんのなかにあったスタンスですか?
そうだと思います。「自然体じゃない状態」って、だいたい何かしら悩んでいるようなとき。でも、私は悩みながらも前に進んじゃうタイプだから、立ち止まって悶々とすることがないんです。フリーランスになるときも、東京から茨城に移住するときも、あまり悩みませんでした。自分がそんな生き方をするなんて想像もしていなかったけれど、なにか上手くいかないことがあったら、そこから少しずつ軌道修正していけばいいと思うから。「『ソラミドごはん』をよろしく」とディレクターを任されたときも、プレッシャーというよりは、誰も答えを持っていないんだから思うがままにチャレンジすればいいと感じました。どんな失敗だって、糧になりますから。
今日からはじめられる「ごはんをおいしく食べる工夫」
――そんな伊東さん、イチオシのお米はありますか?
ちゃんとつくられたお米って、全部おいしいんですよ……(笑)。でも、先日「ソラミドごはん」でお付き合いしているコモリファームさんに伺って、刈り取ったばかりの「夢つくし」をいただいたんです。これは本当においしかったですね。
――おいしいごはんと合わせるおかずは、何がおすすめですか?
じつは、食卓の中心にあるお米がおいしくなると、おかずは質素でも十分ごちそうになるんです。削りたての花かつおをふわっと載せたり、自家製のぬか漬けや「ろく助」の塩をぱらっと添えたりするだけで、充分に満たされる。昔は一汁三菜を意識して献立を考えていたけれど、シンプルなおかずだけで満足できるようになったから、自炊のハードルもぐっと下がりました。卵とごはんしかないような夕飯でも、夫婦で「おいしい、おいしい」って食べてます。
あとは、お味噌汁のお味噌にもこだわるようになりましたね。お気に入りは、茨城県結城市のふるさと納税でも手に入る「秋葉糀味噌醸造のつむぎ味噌」。いずれはこういうものも「ソラミドごはん」で扱っていきたいと考えています。
――おいしいごはんは食べたいけれど、伊東さんみたいに羽釜に挑戦するのはなかなかハードルが高いですよね……。初心者は、どんなことから試すといいでしょうか。
まずは、家の炊飯器でもできる炊き方や、炊いたごはんの保存方法から工夫してみるのが手軽だと思います。「ソラミドごはん」が最初にリリースしたコンテンツも、そんな記事でした。熱いうちに薄く広げて冷凍すると、ほとんど味が落ちないんです。
最高の味を追求したくなったらいい炊飯器や釜を買うのもいいけれど、まずは「いまある道具とお米のポテンシャルを引き出す」ことから。じつは、その魅力を50%も引き出せていないかもしれないし、ささいな工夫ですぐ100%になるかもしれません。おいしく食べるために、お米に込められた背景なんかも知ってほしいなと思います。
――お米の背景ですか?
情報が、さらに食べ物のおいしさを増してくれることがあると思うんです。私がコモリファームでいただいたお米を特別おいしく感じたのは、田んぼに取材に行って、どんな苦労やどんな想いのすえに生まれたお米なのかを知ったから、かもしれない。だから「ソラミドごはん」では、農家さんのいろんな物語を伝えていきたいと考えています。
たとえば、スーパーで販売されているお米は、その地域の様々な農家さんでつくられた同じ銘柄が混ざっていることがほとんどです。対して「ソラミドごはん」で扱うお米は農家さんとの直接契約のため、「単一米」といって、ひとつの農家さんでつくられたお米をパッケージングしています。こだわりを持って作られた「うちのお米です!」と胸を張れるものばかり、というわけです。これを知ったら単一米に興味がわくし、その情報を知ったうえでこだわりのお米を食べたら、よりおいしく感じると思いませんか?
――思います! 最後に、これから「ソラミドごはん」でやっていきたいことを聞かせてください。
田んぼのシェアや稲刈り体験、お米のワークショップなど、Webサイトの枠を超えてさまざまな企画にチャレンジしたいと思っています。いままでは「仕入れて売る」「情報を伝える」がメインだったけれど、農家さんやユーザーさんとコミュニケーションをとりながら、一緒にお米のおいしさを探求していきたいです。ごはんに興味を持っている企業やイベントがあれば、積極的にコラボレーションもしていきたいですね。
米農家には減反政策や後継者問題といった課題もあるけれど、ごはんがおいしいと思う人が増えていけば、お米にまつわる仕事の在り方も変わっていくはず。私たちの活動の積み重ねで、ゆくゆくは“日本のごはん”で世界の食を支えるような未来が来たら、とってもうれしいなと思います。